2008年12月25日木曜日

日記 - 魚をおろして思うこと

 恒例の診察もいつも通り何事もなく終わり、またいつもの通りに海岸沿いにある鮮魚センターへいった。
 いわゆる観光者向けのプチ市場の形式をとった”道の駅”(旧式に言うとこの”ドライブイン”)なのだが、地元民もわりと利用している、こういった態度の施設にしては稀な、成立しているとこなのである。母と一緒にいつも通り各店舗の品揃えを冷やかすことにした。平日のせいか、どこの店員も地元向けに ’まっとうな’商売を行っている様にみえた。
 『のどグロ、旬だから買っていこうか。ここら辺が名産なんだよ。』
 『のどグロ..........初めて聞くよ。金目とどこが違うの? のどでも黒いの? 黒くないよねぇ。』
 『....まぁ、旬だから5尾くらいでいいかね?』
 母はもう購入することを決めたらしい、20cmくらいのそののどグロたちの脇には50cmくらいの立派な鰹が並んでいたので僕はそっちに気を奪われていたのだが、もう母の中では決まっていたらしいので僕はうなずいた。
 『900円です。』
 『じゃあ、これ僕が出すね。』
 『おー、アリガトウ。じゃあ夜はのどグロの塩焼きね、お母さん今日は集まりがあるから、お前裁いて焼いてね。』
 『お、.......了解です。』


 料理は好きだ。
 月並みだが、特にみんなで食べるご飯は最高で、ましてや自分が作ったやつをおいしくいただいてくれるのは最高に幸せなのだ。

 子供のころから料理はやっていたので料理の手さばきは一流であるし、東京で若い頃は厳しい場所で接客業をしていたのでサーブも馬鹿にしたもんじゃないと思っている。両親や、兄弟も僕がつくる料理には信頼を置いていてくれるので僕は気持ちよく料理を行い、サーブすることができる。

 昼過ぎ、地元では有名なラーメン屋でいつも通りに昼ご飯をとって家に戻ってきた。
 今日はひとつ、上品に裁いてしまおうかしらと思った。といっても、まるまる一匹の魚をさばくということを行うのははじめてであって、『今日はひとつ』なんて軽いノリなんてあったもんじゃナイスガイな俺。
 昆布でも使ってはさんでやって、鯛のような品格のノドグロちゃんに仕上げちゃおうじゃないの。旨いが一番。うちの出刃包丁はちょっと振りが大きすぎるので、柳刃包丁を使ってさばくことにしてみて、さらに鱗取りには『鱗取り名人』なる名人を助っ人にしてみた。

 果たしてこいつはノドグロであった。

 ノドどころか、ハラもくろい。芸能人で言うならみのもんた、落語界でいうなら楽太郎なみの腹黒さと、音楽の殿堂で言うとこのジェームスブラウンか改名して今やなんやら訳の分からなくなった力也(a.k.a 安岡力也)ぐらいの喉の黒さだ。

 ♪ノドクロ〜あめ〜 
 
 なんて瀬川英子でございますに歌わせるよりもか、パワーメタルの雄、『パンテラ』の邦題、”鎌首”にそのテーマ曲がはいっていてもおかしくないくらいのハードな気持ちになってしまった。

 そんな気持ちになった後、結局僕は、5尾すべてをスマートに裁ききり、エレガントにコブ(昆布)で包み上げ、ナイーブな塩加減でこいつらを仕上げきった。

家族絶賛、魚さばきにはうるさい親父からも合格をいただきましたとさ。

あーもう、ハードにさせて。

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